3月中旬の暖かい日、久留間くんはスタッドレスタイヤを履いたお客様に、
『普段あまり距離を乗らないし、冬にまた付け替えるのが面倒だから、そのまま履いておく』と言われました。
それって本当に大丈夫なんでしょうか?
研修生
田井屋店長!
先ほどのお客様に、普段あまり距離を乗らないのでスタッドレスタイヤを履いたままにすると言われたのですが、それって本当に大丈夫なんですか?
店長
何をもって大丈夫というかによっても違うんだよ。
法律的には、残り溝さえあればそのまま履いていても大丈夫だよ。
研修生
法律的には??
では、何的には大丈夫じゃないんですか?
店長
安全的には決して大丈夫とは言い難いかな。
走行はもちろんできるんだけどね。
研修生
夏場にスタッドレスタイヤを履いていたら危険なんですか?
だって、雪のないところでも安全に走れるってスタッドレスタイヤが今は多いはずでは??
店長
久留間くん!
それは冬の路面の話で夏場も安全に走れるということではないんだよ
研修生
その辺よくわからないんですが・・・
店長
では、スタッドレスタイヤを通年履いていた時のメリットとデメリットを説明しましょう。
スタッドレスタイヤを夏場も履き続けると危険?
まず、スタッドレスタイヤと言うものは、冬用タイヤと言われるだけあって、冬の路面を走行できるように開発されたタイヤです。
これは、なんとなくイメージでわかりますよね?
スタッドレスタイヤは、舗装路を長時間走れないタイヤチェーンとは違い、雪道や凍結路をそのまま走れますが、同時に舗装路もそのまま走ることができます。
なのでタイヤチェーンの様に、走行中付けたり外したりしなくてすむので、今では雪の降る地域の車には、かなりの確率で装着されています。
しかも最近のスタッドレスタイヤはとっても進化をしていて、雪のない道でも普段と変わらない感じで運転できます。
雪や氷の路面で滑りにくくするには、簡単に言えばタイヤ自体のゴムを柔らかくして路面との密着率を上げ、滑りにくくするという技術が使われています。
ゴムの柔らかさが命!ってことですね。
ゴムなので年数が経てば劣化して硬くなりますし、タイヤなので溝がすり減ってしまえば交換しないといけません。
スタッドレスタイヤの交換時期、寿命に関しては、後日詳しく解説いたしますが
タイヤメーカー各社は、それぞれの技術で硬くなりにくいゴムを作ったり、タイヤの溝の形状(トレッドパターン)の開発で冬の路面でも滑りにくいタイヤを開発しているんですね。
以前までのスタッドレスタイヤは、 柔らかく不安定な乗り心地でフラフラする感じがしていました。
なので、スタッドレスタイヤを履いている人も、早く夏タイヤに戻したくてしょうがなかった覚えがあります。
早く戻し過ぎて、夏タイヤにした途端大雪が降り、1シーズンに2回脱着された人もいました。
なので、以前スタッドレスタイヤを夏タイヤに戻す時期 について書いた記事にもありますが
本当に必要なくなるまでスタッドレスタイヤを履いていましょう。
では、冬にスタッドレスタイヤを履いたまま夏場も履き続けたらどうなるのでしょうか??
結論から言うとそのまま履き続けるかことは可能です。
法律上、残溝が1.6mmさえ残っていれば車検にだって通ります。
道路交通法的には、夏タイヤもスタッドレスタイヤも同じ扱いなんですね。
その証拠に、スタッドレスタイヤにも夏タイヤと同じところに、タイヤとしての限界を示すスリップサインがついています。
なのでスリップサイン(残溝1.6mm)を下回らなければ履き続けても問題ありません。
ただ、それは法律上の話であって、安全面から言うとスタッドレスタイヤを夏場も履き続けるのは安全とは言えません。
舗装路の性能が良くなった今のスタッドレスタイヤだったらいいんじゃないの?
とお思いの方もおられると思いますが、それは今までのスタッドレスタイヤと比べてという意味で、夏タイヤと比べてではないんです。
これは夏タイヤの画像です。
これがスタッドレスタイヤの画像です。
この画像を見比べて頂いたらわかりますが、スタッドレスタイヤの方が、夏タイヤと比べて細かく沢山横向きに溝か掘ってあるのがわかりますか??
これは、雪や等結路面で前に進むために引っ掛ける効果があります。
イメージはブルドーザーみたいなものですね。
この横向きの溝で、雪が積もっていても引っ掻いて進んで行くことができます。
そーいった冬の路面では活躍してくれる横溝ですが、逆に雨などの水の逃げる道、排水性能が悪くなるデメリットがあります。
夏タイヤの画像を見て頂いたらわかると思いますが、溝の数も少なく一つ一つの溝も大きくなっているのがわかりますか?
これは、路面に設置するゴムの面積を多くすることで路面との抵抗を増やし滑りにくくしています。
雨などの水に対しては、大きな水路でタイヤの外に逃がし、露面とタイヤの間に入り込まないようにされているんです。
ただ、スタッドレスタイヤは、横の溝を多くしている分、雨などの水が逃げ切らないので、雨の日の性能が悪いとされています。
制動距離(ブレーキを踏んでから実際に車が止まるまでの距離)も、それぞれのタイヤの種類にもよりますが
スタッドレスタイヤの方が、長いとされています。
制動距離が長いという事は、ブレーキをかけてから実際に止まる距離が長くなるのですから、事故を起こす確率が夏タイヤより高くなるという事です。
もう一つは、最近軽自動車にも搭載されています、自動ブレーキシステムです。
前方のカメラで、障害物や人を感知してブレーキを車が勝手にかけてくれるシステムですね。
とっても便利な世の中になったもんだと思いますが、これって車はタイヤの種類を識別できるんでしょうか??
いいえ!車は夏タイヤを履いているか、スタッドレスタイヤを履いているかなんてわかりません。
では、あのCMとかで障害物ギリギリに止まる映像の車ってどのタイヤを履いているかご存知ですか??
あれは、新車発売時に装着されているノーマルタイヤが装着されています。
しかも最近の車って、もともと結構性能の良いタイヤが装着されているんですよ。
では、単純に考えて、夏用タイヤとスタッドレスタイヤでは制動距離がスタッドレスタイヤの方が長くなるのだから
夏タイヤで設計されている自動ブレーキは、夏タイヤでは障害物ギリギリで止まれても、スタッドレスタイヤだったら当たってしまうという事になります。
自動ブレーキがついた車の取り扱い説明書にもスタッドレスタイヤ装着時は、自動ブレーキでの停車距離が長くなるので注意してください的な注意書きがされています。
これって安全と言えるのでしょうか??
後は、先ほどスタッドレスタイヤは柔らかさが命!とお伝えさせていただきましたが、
タイヤはゴム製品ですので、夏の暑い路面を柔らかいスタッドレスタイヤで走行すると、早く摩耗してしまいますし、
路面の暑さでゴムが劣化し硬くなってしまうので、普段あまり距離を乗らない方でも、次のシーズンも今のスタッドレスタイヤを使用するのなら
面倒でも、ショップが忙しくて待ち時間があっても、少し費用がかかっても
夏タイヤに交換されることをお勧めします。
もう次のシーズンでスタッドレスタイヤを交換しないといけないから、そのまま履き続ける(履き潰し)方もよく見られますが、
夏タイヤに戻す手間がめんどくさい、費用がもったいない、どうせ交換するから・・・
その気持ちはよくわかります。
ただでさえタイヤって安い買い物ではないですしね。
でも、そのすり減ったスタッドレスタイヤほど怖いものはありませんよ。
ただでさえ排水性能が良くないタイヤなのに、すり減っていたら余計に水路が狭くなって水が逃げれません。
そんな状態で高速道路なんて走った日には危険すぎます。
普段家の周りを走るだけではわかりにくいかもしれませんが、ブレーキを踏んだ時(特に雨の日)は確実に制動距離が伸びていますので、危険な思いをする前に夏タイヤに戻すようにしましょう。
スタッドレスタイヤを履き潰すメリットとデメリット
では今の話をまとめると、
スタッドレスタイヤを夏場も履き続ける
メリットは
・交換に行く手間がかからない。
・交換にかかる費用がいらない。
・持っている夏タイヤが減らない(劣化はします)
デメリットは
・交換に行く手間がかかる。
・交換にかかる費用がかかる。
・雨の日滑りやすい。
・自動ブレーキが確実に止まれない。
・夏タイヤよりフラフラする。
・夏タイヤより走行音がうるさい場合が多い。
メリットとデメリットを比べてみても、やはり少し費用は掛かっても
夏は夏タイヤで走行する方がいいと思いますよ。
何かあってからでは遅いとはこの事を言うのかもしれませんね。
費用や手間より、安全を第一に考えてお車に乗って頂けたらと思います。